ジャニス・カール ベンゾジアゼピンインフォメーションコーリション創立者
わたしはベンゾジアゼピンの潜在的な危険性について啓蒙することを使命とするNPO団体の創設者です。そんな私は、よく被害者から「ベンゾジアゼピン減断薬に詳しい医者を教えてください」と尋ねられます。たぶん、もっと正確な質問はそうではなくて、「どうすればベンゾジアゼピンを減断薬できますか」だとは思うのですが…。そういった質問に答えるために、みなさんに専門医がついているかどうかにかかわらず、みなさんの成功を確実にするいくつかのヒントを共有しようと思います。包括的ではありませんが、ベンゾジアゼピンを中止したい人にとって下記10のリストは最重要事項です。
ひとつ注意書きを入れさせてください。これらのリストはわたし自身の経験と大勢の先人達のストーリーに基づいて編集しました。私は医療専門家ではありませんので、私の意見は医療アドバイスとして解釈されるべきではありません。詳細については、当社の[医学的免責事項]をご覧ください。
1.オンラインサポートグループに参加して
医者だけに頼るのは不十分です - 彼ら医療者が何に反対しているかをよく理解しなければなりません(彼らも多くの仕事があり、また損益分岐点を考慮しなければならないビジネスマンなのです)。このことはベンゾジアゼピン離脱情報が正確なサポートグループではよく共有されています。不正確な情報もたくさんあります。正しくベンゾを漸減している被害者に不安をもたらすグループには十分注意してください。(管理人注:ここで述べられているサポートグループは「ベンゾバディ」や「Benzo Recovery」など米国のものです。日本ではこのような信頼できるサポートグループはまだありません。ベンゾ身体依存を依存症とし急減薬につなげる自助会やカウンセラー、代替療法が多くあります。充分に気を付けてください)。人は忍耐強く、知識はオンラインにあります。推奨されるグループやWebサイトは、当社のWebサイトの[参考文献]セクションにあります。ご一覧ください。
2. アシュトンマニュアルを読んで
いまはより良い資料(ベンゾジアゼピンテーパリング戦略とソリューション)があるのでアシュトンマニュアルに厳密に従わなければならないわけではありません。しかしながら、アシュトンマニュアルはベンゾジアゼピン離脱についての一般的な質問に答えるために書かれた専門的なガイドラインです。それを読んでおくほうが現代のより良い資料やガセネタを区別する目を養います。
3.ベンゾジアゼピン離脱の専門家などいないと認めて。そして代わりに、あなたと共同作業してくれる医者を見つけるように
多くの被害者がベンゾジアゼピン離脱をサポートしてくれる医者を必死に探しまわります。一部のドクターで自分はベンゾ専門医であると言っているケースもあります、しかし悲しいことにほとんどの場合そうではありません。ベンゾ専門医を探す労力は時間やお金は無駄になることが多く、時間やお金は正しく漸減して回復するのに使うべきです。また「自称専門家」との接触が多ければ多いほど、危険で致命的な処方に遭遇してしまう可能性が高まります。最も一般的な医者の誤りについて説明しましょう。ベンゾジアゼピンを正常に漸減できた人のほとんどは専門医の助言なしで成功します。実際には、間違ったアドバイスが医者の間で普通にまかり通っています。多くの被害者が、テーパリング(水溶液タイトレーションなど)によって正しい漸減をしていても、大胆に「カットオフ」される危険性を懸念して医者にそのことを知らせないようにしている、と私たちに報告しています。ベンゾジアゼピンの中止についてよく知っている医者もいますが、非常に稀です。「専門家」ではなく「ベンゾ離脱協力者」を探してください。— あくまで主体はあなた自身。「ベンゾ離脱協力者」はナビゲーターとして配置しておくのがベストシナリオです(管理人注:あくまで主体的に減薬に取り組むことを主治医に告げましょう。そして主治医には後方支援をお願いしましょう。じっさいに主治医に読んでもらえた記事はこちら。またはこちらを印刷して持参し丁寧に協力をお願いしてみてください)。
「ベンゾ離脱協力者」は患者に対して次のように対応します。
・あなたが良いと思うペースで、あなた自身にテーパリングさせます。
・テーパリング期間中はかならず処方を継続します。
・(必要な場合)適切な用量で長時間作用型ベンゾジアゼピンへの置換に対応します。
残念なことに、医師はベンゾジアゼピンの減薬断薬にとりかかると、処方箋が上品になり致命的な結果を招くことになります。ベンゾジアゼピンをやめたい、また、報告された禁断症状をなんとかしてほしい、そういった患者の要求に過剰に反応し、一気断薬や急減薬させてしまったりします。こういったことは頻繁にわたしたちのもとに報告が来ます。したがって明確に警告しておきたいのは、仮に現在の主治医に見切りをつけるのであれば他の医者との診察予約も含めて必ずバックアッププランを立ててください(つまり処方が切れないようにしてください)。
患者から肯定的なフィードバックを受けた医者のリスト、または「ベンゾ離脱協力者」であるという意思を表明した医者のリスト(http://benzoinfo.com/doctors)は、当社のサイトで見つけることができます。とは言っても、多くの方がすでに退職しており、また、フィードバックが足りないために削除されている人もいます。需要に対して圧倒的に供給が少ない、というのが現状です。
4. あなたのベンゾジアゼピン身体依存を説明するときにはアディクションや乱用という言葉をさけて
身体的依存(dependence)と、乱用(abuse)や精神依存(addiction。アディクション)の違いを学びましょう。不適切な言葉はあなた自身の離脱失敗、医師の誤解を招きます。また他の被害者を傷つけ、そしてベンゾジアゼピンを取り巻く大きな無知のプールを広げるのに役立つだけです。これについては以下のページで広く説明されています。1, 2, 3, 4, 5
もしあなたがご自分を乱用者と呼ぶのであれば、なおさらこれらの記事を読んでいただくよう心からお願いします。
5.依存専門病院・施設へ行かないように(例外あり)
法令遵守している患者(オーバードーズをしていない等)がベンゾジアゼピンの中止のために依存専門病院・施設には行かないよう警告します。このアプローチを検討する前に、[ベンゾ処方量依存者が依存専門施設に行ってはいけない理由]で概説した結論をあなた自身で見つけてください。
6. ジアゼパム換算値の等価変換と置換の方法を覚えて
多くの患者は、バリウム(ジアゼパム)のような、短い半減期薬から長い半減期薬のベンゾジアゼピンに切り替えること(別名「クロスオーバー:置換」)をします。しかし困ったことに、複数のベンゾジアゼピン等価表があり、その一部は過少投与となる可能性があります。 アシュトンマニュアルガイドラインは他のものよりも等価量が高めに設定されていますが、それは実際の臨床現場に基づいた最も現実的なエビデンスです。とは言っても、等価表はあくまで目安であり、真の同等性は個人によって異なる場合があります。移行期間なしに、直接置換を行うこともお勧めできません。 アシュトンマニュアルの等価表には、段階的な移行方法についての具体的な説明があります。(管理人注:日本では稲田式ジアゼパム換算値が有名ですが、日本以外では主にアシュトン値が使われています。ロラゼパム(ワイパックス)、アルプラゾラム(ソラナックス)、フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)は要注意!ベンゾジアゼピン薬剤一覧を参照ください。)
7.何人かの患者は離脱アプローチに関係なく無症状であることを認識して
ベンゾジアゼピン離脱の重症度はスペクトル(数理的に分散されている)です。したがって離脱症状がなかった患者に対する離脱アプローチはまったくその結果と因果関係がありません(管理人注:身体依存度がゼロ/軽度だったために離脱症状がなかった/軽かった、といえるのであって、その人に対する漸減スピードが誰にでも適用できるわけではない)。残念なことに、医学はしばしばこれを標準とみなしており、容易に離脱できた幸運を医師のスキルまたは中止方法に誤って帰しています。そして問題は、どの患者がどの離脱スペクトル(離脱症状なし・軽度・中度・重度、の分布図)に該当するかを事前に診断する方法がないということです。他人に何をしたのかを尋ね、その結果があなたに当てはまると仮定しても、あなたが最終的にどうなるかについてあまり参考にならない、ということです(管理人注:たとえば、精神的に薬の効果に依存しオーバードーズを繰り返していたような人が、止める時にまったく離脱症状なく離脱できる例は多くあります)。
8. 医療専門家によって提供されるテーパー率はしばしば恣意的で過度に速い
ほとんどの医師は、可能な処方量に基づいてベンゾジアゼピン中止のために任意のテーパー率を選択します。例としては、1日の総投与量に関係なく、数日ごとに4分の1または2分の1にカット。隔日法。1週間に20〜25%(またはそれ以上)の減薬。ほとんどの患者は処方を信頼しているので盲目的にこれに従いますが、テーパリング手法は医学界でほとんど研究されておらず、損害を与えるか致命的になります。Schweizer et alによると、多くの医師が1週間に25%の急速な減薬を行ったことで失敗率は32〜42%でした。FDA推奨中止率でさえも高い失敗率となっています。Nassimaらによるレビューは、FDAの推奨するXanax(アルプラゾラム、ソラナックス)減薬率は早すぎると結論付けました。
9. あなた自身の減薬率と方法を知って。基本は「スタートロー、ゴースロー」
多くのサポートグループがあなたの主治医に提示できる印刷可能な減薬プランをあなたに提供するでしょう(例えば、毎月5-10%の減少率を利用する液体マイクロテーパー(水溶液タイトレーション))。全員がそれぞれ違うので、最初は遅く始めるのが最も賢明なアプローチです。問題なければスピードを上げればいいし、早すぎると感じた人はさらにはスピードを落とすことができます。
重要なことがあります。被害者の中には比較的簡単な減薬を報告し、断薬まで問題なく、しかしながら断薬後に離脱症状が発生するケースがあります。断薬後数週間たって症状が強くなっていき、そして長期間の厳しい遷延性離脱症状に陥るケースです。このため、細心の注意の精神のもと(in the spirit of caution)2〜4週間に5~10%の減薬を推奨していますが、この減薬スピードはたとえ減薬中症状が小さくとも守るべきガイドになりえます。(管理人注:緩やかな漸減であまり苦しむこと無く半年で断薬できたケースで、断薬後に徐々に状態が悪くなり寝たきりになるほど遷延性離脱症状が酷くなる例がありました。1年以内に終わりそうでも、恣意的に最低1年半以上減薬期間を引き伸ばすことをお勧めします)。
10.多剤併用やサプリメントは、ベンゾジアゼピン離脱を解決しない
多くの離脱中被害者が「症状を和らげるためになにか良いものはありませんか?」と尋ねますが、ベンゾジアゼピン離脱を「治療する」ために薬やサプリメントを利用する証拠はほとんど限られており説得力がありません。または存在しません。実際、英国ナショナルフォーミュラリーとアシュトン博士は、多剤処方とサプリメントに対して警告しています。ただ、医学的に取るように勧められていることを含めて、すべてを避けるべきであるという意味ではありません。むしろ、あなた自身で研究をしてください。
あなたの減薬でこれらのヒントが役に立つことを願います。
(翻訳&注釈:ベンゾジアゼピン情報センター 管理人)
臨床心理学修士号に取り組んでいたときにアチバン(ロラゼパム・ワイパックス)を処方されベンゾ傷害を負う。 何かがおかしいと感じていた彼女は独自調査の末、原因がアチバンであることを確信。ベンゾジアゼピンの危険性とベンゾに関する調査・研究の必要性を啓蒙するために2016年米国NPO団体ベンゾジアゼピンインフォメーションコーリションを創立。現在そのメディカルボードおよびメディカルアドバイザーには多くの医師、医学博士が顔を連ねる。