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ベンゾジアゼピン情報センター 管理人
どのペースでの漸減が最も適切なのか?SNS界隈ではたいていご自身の成功体験を元に主張し意見がぶつかり合います。結論から申し上げますと、ご自身の成功体験はご自身のみに合った減薬ペースです。したがって、この記事でベンゾジアゼピン身体依存が重症化する確率(つまり離脱症状が重くなる確率)を示しそのことを明確化します。
いくつかのエビデンスを元に概算した結果、次のようになりました。参考エビデンスは下にある【参考文献】に記載した通りです。この概算について解説も読みたい方は拙書『ベンゾ系睡眠薬・抗不安薬からの安全な離脱 改訂版』第2章、第4章をお読みください。
このように、ベンゾジアゼピン身体依存の重症度はスペクトルになるでしょうが(つまり軽度~中等度~重度・重篤の間にハッキリ境界線があるわけではない)、重篤レベルは約1割といってよいでしょう。『重篤な有害事象発生率が1割』は処方薬としてはとんでもない高頻度*)と言えます。
*)例:サリドマイド薬害:「服薬妊婦の約20%で催奇形性」(全服薬者の0.00...%?)
患者のみなさんの環境(生活環境やご家族・主治医の協力具合)を考慮せず、単純にこの重症度に沿って減薬ペースを当てはめると次の円グラフになります。
これで一目瞭然だと思います。身体依存重度の人が、軽度・中等度の人の減薬ペースを参考にしては危険であるということです。
また、同じA群の人であっても、A群の中でも特に重篤の人、A群の中でもB群に近い人では大きく違います。
10年20年長期間服用していた人でも離脱症状なく止められる方はたくさんいます(無症状~軽度)。
逆に、短期間しか服用していないのに止めるのに非常に困難する人もいます(重度以上)。
また、長期の漸減が必要な場合でも数か月~1、2年の順当なテーパリングで離脱できる人もいますし、5年、6年あるいはそれ以上かかる人もいます。たとえば多剤の方は1剤ずつ行うので単剤の方より時間がかかるし、漸減途中で失敗しやり直しになることもあるし、生活環境の大変化や無理がたたり服薬を元に戻さざるを得なくなる人もいます。つまり減薬プロセスの道程は人それぞれなので、人と比べることはまったく意味がありません。参考にすべきは自身の離脱症状の発生具合だけです。
わずか数日~数週間で身体依存形成されてしまう6)場合もあり、服用期間と離脱症状の強度に相関性はありません7)
1) 馬場 元. "ベンゾジアゼピン依存症". ドクターサロン. 60巻9月号. 17-20. 2016.
2)C Salzman. "The APA Task Force report on benzodiazepine dependence, toxicity, and abuse". American Journal of Psychiatry. 10(6). doi: 10.1016/0924-9338(96)80312-9. 306-11. 1995.
3) Sean David Hood, Amanda Norman, Dana Adelle Hince, , et al. "Benzodiazepine dependence and its treatment with low dose flumazenil". British Pharmacological Society Journals. Feb;77(2). 285-94. 2014. (「6か月以上服用した場合40%は中等度から重度の症状となる」)
4)* Michael Soyka. "Treatment of Benzodiazepine Dependence". British Pharmacological Society Journals. Feb;77(2). doi: 10.1111/bcp.12023. 285-94. 2014.
5)Shane Kenny's produce. "The Benzodiazepine Medical Disaster". RTÉ Ireland's National Television and Radio Broadcaster. 2017.(マルコム・レーダー博士「服用者の約20〜30%が離脱に困難をきわめ、さらにそのうちの約3分の1が非常に悲惨な状態に陥る」)
6)* U.S. Food and Drug Administration. "FDA requiring Boxed Warning updated to improve safe use of benzodiazepine drug class" FDA Drug Safety Communication. 09-23-2020. 2020.
7) E Schweizer, K Rickels, W G Case, D J Greenblatt. "Long-term therapeutic use of benzodiazepines. II. Effects of gradual taper". JAMA Psychiatry. Oct;47(10). doi: 10.1001/archpsyc.1990.01810220024003. 908-15. 1990.
8) 竹村孔明, 河野敬明, 稲田 健. "不安症治療におけるベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用". 精神医学 第62巻第4号. 427-34. 2020.(「1~2週間ごとの減薬では早すぎる可能性もあり、数倍~数十倍の時間をかけた減量が必要となることが少なくない」)
非ベンゾジアゼピン薬のゾピクロン(商品名アモバン)ユーザーであった。2015年後半体調悪化し、さまざまな検査で異常なしであったため、食事内容を立て直しお酒などリスク因子について調査しひとつひとつ排除していく。その過程でベンゾの危険性と、非ベンゾジアゼピンもベンゾファミリーのひとつであることを知り減薬を決意。 中途半端な知識から最強ベンゾのひとつフルニトラゼパム(商品名サイレース、ロヒプノール)に自己判断で置換(最大の失敗)。フルニトラゼパムの急減薬で生き地獄のような離脱症状を経験する。その後フルニトラゼパム再服薬および増薬(ジアゼパム10mg)が奏功し”ある程度”安定化。主治医の協力のもとマイクロテーパリングにて減薬を始める(2017年2月)。 フルニトラゼパムの減薬は終了(2020年1月)。 現在ジアゼパムを減薬中。本職はエンジニア。
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