故カサンドラ・ナーバーグ Cassandra Narburgh
カサンドラ・ナーバーグ(Cass Narburgh)というアメリカ人女性が処方量内ベンゾによってベンゾジアゼピン離脱症状に陥り、1年半耐えたものの2018年8月23日木曜日自殺しました。彼女は2つの遺書「メディカルメッセージ」と「友人へのメッセージ」を残しました。 (管理人注記:この記事は「友人へのメッセージ」を翻訳したものとなっております。「メディカルメッセージ」はこちら)
以下本文
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友へ―わたしの最後のメッセージ
わたしは1年半の間おおいに苦しみつづけ身体は衰弱しつづけている。いわゆるベンゾジアゼピン離脱症候群(BWS, Benzodiazepine Withdrawal Syndrome) で苦しんでいるのだけど、これは“離脱症状”ではなくてむしろ、ベンゾ処方薬による“脳障害”。わたしはこの薬をドクターの指示通りに服薬し、決して中毒になったわけでもなく、またリスクについてまったく説明されていなかった。時間の経過とともに、ベンゾジアゼピン薬(ベンゾ)は脳のあらゆる部分にわたってGABA受容体にダメージを与え、脳と身体のすべての系統に障害を与えるの。GABA受容体とGABAの働きは脳と身体のブレーキに相当する。それは身体の神経系統にスロー、またはストップをかける作用をコントロールする。一方でグルタミン酸受容体とグルタミン酸は神経系統を賦活化させるアクセルよ。なのでGABAの働きが止まると、ブレーキのないクルマと同じになりその状態でバランスをとることは難しく、すべての身体パーツ、すべての神経系統、すべての臓器を機能不全にする。修復せずに時間が立てば立つほど、機能不全の身体パーツはますます回復が難しくなって、ひとそれぞれだろうけど私に関してはこの脳障害によって影響の受けなかった部分はひとつもなかったわ。正直、心不全や呼吸停止、その他生命維持にかかわる重要な機能がいままで停止しなかったことにむしろ驚いているくらい。
脳はすべてをコントロールする。歩く、タイピングする、読み書き思考。感覚情報の関知とその解釈、心拍、呼吸、消化。そして感情、気分、感情的反応のすべて!“精神的症状”は身体を包むエーテルのようなものではなくてね、それは脳内の物理的反応そのもの。脳が障害を受ければ脳がコントロールしているすべての機能が障害を受けるってこと。したがってこの薬が影響を与えたと思われる事象はさらに増幅されダメージを与え、それは他の身体システムに広がっていく。この脳損傷からの平均回復時間は6〜18ヶ月。でも、多くの場合回復までは数年かかり、恒久的な損傷状態になる場合もあるわ。
ベンゾジアゼピン離脱症候群の重症度はさまざま。ここではベンゾジアゼピン離脱症候群をより深刻にし、長引かせ、脳障害をさらに酷くする要因を列挙するわ。
わたしは医療のサポートを求めて、脳の回復、ひいては健康を取り戻すこと、少なくともこの拷問のような症状が少しでもマシな状態になるよう努力したの。すべての努力は苦痛を増幅するだけだった。わたしがこの状況から学んだこと、それは医者からはまったくなんのサポートも得られなかったという事実。医者が自らわたしに施した処方でのこの結果について、なんら謝辞も助けもないなんて残酷なんて言葉では言い尽くせない。あらゆる医師はこのことについてまったく知らず、学ぼうともせず、詳しい専門家を紹介しようともせず、ただわたしの多くの症状のいくつかをピックアップして関係ない病名を挙げるか、もしくはまったく聞く耳を持たなかった。現在テーパリング減薬を指導できるどころかベンゾジアゼピン離脱症候群であると診断できる医者はほとんどいない。ベンゾによる脳障害とそれがもたらした副次的な他の障害に対処できるよう情報をもっている医者はまったくいなんです。このベンゾ被害で助けを求めることは、ストリートで大声でヘルプ!と叫んでも誰もが知らん顔で通り過ぎるような悪夢を見ているようなものだった。この苦しみを訴える人々はみんな誤診され、自分になにが起きているか、医師からはなにも知らされないわ。だから数え切れないほどの人々がベンゾによる脳障害がもたらすこの拷問から逃れるため自殺する。そしてそれらの数え切れないほどの自殺者はそのまま数えられないただの自殺者になる。だって誰もそれがベンゾジアゼピン離脱症候群だとは気づいてないんですもの。この脳障害の治療法はなく、誰もそれを解明しようともしません。わたしの自死がベンゾジアゼピン離脱症候群によるものだ、という事実。それを人々に知らしめることがわたしにとって最終的な目的よ。わたしの自死によって。なにかが変わればいい。ベンゾジアゼピン系脳障害がもっと世間に知られてほしい。
ベンゾジアゼピン離脱症候群の想像を絶する苦しみを理解すること、そしてこの脳障害を最初にもたらしたのが医療界そのものだなんて、みんなは理解できないかも知れない。それらについてすごくいい例になる映画を見つけたわ。“Bain On Fire”という映画。ノンフィクション。この映画では主人公はベンゾジアゼピン離脱症候群ではないけれど、別の病気でわたしたちと同じような症状になり、医者に匙を投げられてしまうの。注意深く問診することも学ぶことも調査することもなく、メンタルの問題、で片付けられてしまう。すごく似ているわ。もし過去に戻ることができるならぜったいにすべての精神薬は飲まないわ。過去6年間ものあいだ、わたしの双極性障害を治療する薬物療法に精通した医師を探してきたけど、誰一人役に立たないどころか、さらに病状を悪くするわ新しい症状を発症するわでわたしを頭のてっぺんからつま先まで病気にし、最後はベンゾで脳障害よ。薬物療法で100%精神疾患が治るなんてぜったいに信じないで。わたし自身がなによりの証拠。
お願いよ、このことを理解するようにベストを尽くしてほしい。わたしがしでかしてしまったことを、みんなは経験しないように。この(障害を受けた)身体を実体験するのは私だけで充分。ペットを安楽死させることは人道的だと考えられているけど、人間に対してはそうではないわね。これはいろんな意味で悲劇だわ。この遅れた道徳のせいでわたしは人道的な平和な死が望めない。自分でやらなきゃいけない。ほんとうに、ひとりひとり会って直接サヨナラを言いたい。愛するみんなに囲まれて、いかなる判断も介入も法的影響もない状態でこのことについてみんなに語りたい。充分なケアのもとで死を迎えたい。ベンゾのことを語らずに人生を終えるのは、いままで生きてきて最も寂しいこと。誰も痛みの中で孤独に死にたくはないでしょう?“それは死するに充分だ”とか“もっともな理由だ”とかいったことを証明する必要なしに人々が人道的な安楽死を得られるようにと切に願う。いま米国では、残された寿命がすでに短命の場合だけ安楽死が認められているけど、そうでないと“永遠に苦しめ続けろ”ということ。なんて残酷なの!もし自分の愛するペットが苦しんでいて、慈悲と同情の元、苦痛にあえいでる状況に耐えきれず安楽死させたいと思うなら、どうしてわたしにもそう思ってくれないの?終末ケアと安楽死について、改めて考えるべきだわ。
わたしがどう生きてきたかを話したい、それと同じくらい、死ぬことについて言いたいことがあるわ。自分のことをなにもできず、拷問のような痛みに耐えながらゆっくりフェードアウトなんてしたくない。安楽死がなければ、苦しくて時には他人にトラウマを与えるような方法で自殺を実行しなければならない。ベンゾジアゼピン離脱症候群はあらゆる面でわたしの人生を破壊した。健康、心、人間関係、尊厳、生活の質。すべてを取り上げてしまった。私自身が、ではなく、ベンゾジアゼピンが!自死するなんて利己的だ、という人もいる。でも利己的で非道的なのは、他人に苦しみを与え、安全で平和に人生を終わらせる手段がないことではないの?さあわたしの番よ。ただ単に、これ以上終わりのない人智を超えた拷問を耐え続けることはできない。平和を選ぼうと思う。
お別れのご挨拶
この手紙をフェイスブック、他あらゆる場所でシェアしてほしい。わたしを脳障害にし最終的に死に追いやったのは医者の無知!そして、“ベンゾジアゼピン離脱症候群”よりも適切な用語を使ってほしい。ドクターは“離脱”と聞くとどうしてもドラッグを止める際の身体的依存を克服する苦痛だけを想像する傾向にある。でもね、これは適切でないわ。ベンゾによる永続的な苦痛はあきらかに“脳障害(brain injury)”なのよ。ベンゾ被害者のコミュニティですらアディクション(addiction)という間違った言葉を使用する人がいて、それも医療界に正しく伝える事ができないひとつの原因になってる。これを表現する言葉、それはとても平易なものです。すなわち障害(Injury)。みんなお願い、医療界と一般の人々にベンゾの破滅的な影響について広めてほしいの。ベンゾ被害を食い止める唯一の方法は、医師がベンゾの処方方法を変えるかいっそ完全に処方禁止にしてしまうべきだという社会への警告、それしかない。このみんなへの手紙とは別に「メディカルメッセージ」という医療界に向けた手紙を書いたわ。そこには私の服薬歴やベンゾジアゼピン離脱症候群について、わたしが経験した症状などを記載してある。とても長いのでこの手紙には含めなかったけど、研究、教育、予防に役立つものにしてある。「メディカルメッセージ」の情報についてはザイン(カサンドラの旦那さん)にメールしてみてください。chronos313@gmail.com。 それから、ベンゾは精神疾患だけに処方されないのよ。アルコール依存、不眠、発作、筋弛緩、様々な症状でキャンディのように処方されるわ。だから(精神科医だけでなく)すべての医者がベンゾによる現在の、そして未来の被害者を食い止めるためにベンゾについて学ぶべきなのよ!信頼できるオンラインサポートは次のとおりよ。
BIC -;ベンゾジアゼピンインフォメーションコーリション
ベンゾバディ
アシュトンマニュアル
他にも下記のページにいろいろあるわ。
https://prescription-drug.addictionblog.org/five-5-facts-about-benzodiazepine-withdrawal-you-need-to-know/
どうか安楽死について啓蒙してほしい。安楽死について情報がほしい人はそれについて公の場で話すことはできないし、自分のためや安楽死に肯定的な人達のまわりで話すことはできないわ。だからわたしはこうなる前に安楽死について調べておくんだった。あなたがペットに、地球上のすべての動物たちに示すのと同じ慈悲をわたしたち人間にも分けてほしいの。安楽死、それが正しい選択だと無理に主張するつもりはないのよ。あなたの選択はあなただけのもの。ただ人からその選択肢を取り上げてしまうことはやめて。ザイン(カサンドラの旦那さん)とわたしは、わたしのベンゾ障害とそのひっきりなしの介護のために周りから孤立してしまったわ。結果として周囲からのサポートはまったくない。お願い、ザインに手を差し伸べてあげてください。彼は精神的にも経済的にも肉体的にもボロボロよ。部屋の整理整頓、断捨離、料理、家事、家賃、収入源の喪失、等など。お願い。もし私を助けたいと思ってくれたら、ザインをお願い。彼への献金ならここで受け付けています。https://zainsunstonestudio.weebly.com/
ありがとう。
みんな愛してる。
(翻訳&注釈:ベンゾジアゼピン情報センター 管理人)
ニューヨーク北部出身、北カリフォルニアやコロラドに居住。 オンラインゲーム特にRPGの大ファンであり、動物愛護者。 外出できる時はカラオケを楽しみAmon Tobinのファン。 科学的イラストレーションの学校に通いジェンダー平等、人種平等、などあらゆる平等を強く支持していた。(訳注:カサンドラは双極性障害治療中に処方量ベンゾジアゼピン離脱症候群を発症し、医師の指導のもと急減薬と再服薬を繰り返したことによりキンドリングに陥った。壮絶な離脱症状に1年半耐えたものの2018年8月23日木曜日に自死)