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    患者を救うベンゾ離脱法10の心得

    原文:10 tips to help patients through benzodiazepine withdrawal

    著者:

    クリスティーハーフ医師 Christy Huff, MD, FACC

    投稿:20th March, 2018

    医師として私たちは処方薬の専門家です。しかしベンゾ離脱症状を認識しテーパリングで減薬をすることについては、しばしば見事に失敗します。それはただ単に私たちの医療トレーニングが欠けているからです。以前のブログ記事で詳しく述べたように、私はベンゾジアゼピン薬の犠牲になりました。ベンゾジアゼピンというのはほんとうにテーパリングするのがなかなか難しい薬物です。離脱のプロセスで私が得た知恵の一部をお話したいと思います。患者がベンゾジアゼピン離脱を成功させる、10のヒントをお伝えします。 
    免責事項:ここで申し上げることはすべて身体的依存(訳注:dependency)に陥っている患者に対してであり、中毒(訳注:abuse)やアディクション(訳注:addiction)の兆候を示す患者に対してではありません。 
     
    1.患者を信じて 
    離脱症状はしばしば薬物を求めてさまよい歩くドラッグ中毒者のように見え、そのように分類してしまいそうですが、それは真実ではありません。医師としてなかなか困難かもしれないがもしあなたの患者が処方された通りの服用をしていたのなら、それは確かに“ベンゾジアゼピン離脱症状”であり、それは確かに存在し、そして様々な症状を呈することを認識してください。彼らの症状を少しでもいいから注意深く検証することが、長い目で見て最終的に患者の苦痛を緩和することにつながります。 
     
    2.テーパー、テーパー、とにかくテーパー (訳注: taperまたはtapering. 漸減での減薬の事)
    一気断薬や「解毒」と称した薬剤を抜くような行為はけしてしないでください。もう一度言います。薬を抜く、という行為はけっしてしないように。数パーセントなら問題ありません、が一気断薬(訳注: 英語ではcold turkeyといいます)ですと数年にわたる破滅的な離脱症状に見舞われることになります。突然の断薬によって、5年かまたはそれ以上、残酷な症状が続いている多くの友人がいます。非常に微細なテーパリングのみがこの不必要な拷問を回避する唯一の方法です。けしてあなたの患者でロシアンルーレットを試さないで下さい。 

    3.長期間作用型のベンゾジアゼピンへの切り替えを検討して 
    Xanax(訳注:アルプラゾラム、ソラナックス)やAtivan(訳注:ロラゼパム、ワイパックス)などの短い半減期のベンゾジアゼピンは、投与と投与の間隙に禁断症状が発生するため、テーパするのが難しい場合があります。Valium(訳注:ジアゼパム、セルシン)のような長時間作用するベンゾジアゼピンはこの問題を緩和しますし、力価が低めで離脱が比較的易しい場合があります。もちろん、現在服用中のベンゾから直接テーパリングするのもシンプルではあるし、それはそれで構わないとおもいます。 
     
    4.患者主導で、症状ベースで 
    患者主導で症状ベースでのテーパリングがベストです。時間はかかりますが、患者が認容可能な症状のままで減薬していくにはこれしかありません。テーパリングに正しい答えは1つではありません。多くのオプションが存在します。患者はあなたの優れた指導、支援を借りて、自分にあった方法をみずから見つけだす必要があります。 
     
    5.他剤の追加は基本的に必要ない。が助けになることもある。 
    残念ながら、本当に有益な文献は見つからないのですが、ごくわずかな研究や症例報告では、ガバペンチン、カルバマゼピン、プロプラノロールなどの薬物が離脱の助けとなることが示されています。トラゾドン、ミルタザピン、クエチアピンは、不眠対策には役立つでしょう。(訳注:不眠は離脱症状のひとつでしかなく、さらに厳しい身体症状・精神症状がいくつも出ます)。一部の患者はCBD油または医療用マリファナの使用により禁断症状の緩和を報告しています。しかし全員に効くかはわかりません。それに、補助的に追加したそれらの薬剤も最後にテーパリングで退薬しなければならない可能性もあります。 
     
    6.症状への対処法を学ばせる 
    離脱症状が日毎変動によってキツイときもあります。それに対処する方法が非常に重要です。気晴らし、瞑想/リラクゼーション、温かいお風呂、外出、散歩。患者はそういう辛いときはとりあえず1分生き延びる、ということを学ばせます。そしてあの時1分生き延びたのだから今回も、という具合に、ボクシングで言えば1ラウンドづつ生き続けていくことを積み重ねていくわけです。 

    7.許容の気持ちをもたせる 
    テーパリングによる減薬はとても長い時間がかかります。ベンゾジアゼピン離脱に関してはわたしの先輩である友人のひとりは、「不快から快適を得る」「症状にとらわれない」という言葉を彼の主治医と共有していました。簡単なことではありません。努力と継続が必要です。しかし離脱を成功させるためには大切な鍵となります。 

    8.心理社会的支援の有用性 
    たったひとりで離脱プロセスをやりぬく人もいます。わたしは彼らがどのようにしているのか知りません。どうやら、家族や友人、同僚に自分の状況と症状を自分で説明し、納得してもらい、必要なサポートを受ける。身近な心理的な援助は軽視できない、ということなのでしょう。なので、あなたの患者のご家族に、患者ご自身が困難な状況に直面していること、そしてベンゾジアゼピン離脱症状とはどんなものか、ということを説明してあげてください。時間をかけてでも。 

     9.インターネットを恐れない/否定しない 
    そう、私たち医師はみんな「インターネット」(訳注:英語圏ではDr.Googleといいます)が大嫌いです。しかしことベンゾジアゼピンに限ってはネットはわたしの命を救いました。ちょっとネットサーフィンするだけでわたしの離脱症状の原因はなんなのかを理解することができたのです。ベンゾジアゼピン離脱症候群は、私たち医療者の間であまり認識されておらず理解されていないので、患者がオンラインで入手した情報を持ってくるとイラッとするかもしれませんが、まずそれを読み話を聞いてあげて下さい。そのちょっとした情報がひとつの命を救うかもしれません。BenzoBuddiesやBenzodiazepine RecoveryのようなFacebookグループやオンラインサポートグループは、私の減薬開始頃は私にとって非常に貴重な情報ソースでした。わたしは、わたしが何に直面しているか熟知している世界中のおなじ被害者たちと友人になれました。ただそういったフォーラムは、時として巨大で情報も玉石混合なので、患者がそれらに費やす時間には注意が必要です。テーパリングがかなり進んだ今となっては、わたしはほんのコアな友人だけに絞って電話やチャットができる独自の小さなフォーラムを作ったので、いまはそれだけに頼ることができています。 
     
    10.安心感を与えて 
    どんなに時間がかかっても、あなたがあなたの患者をサポートし続けると約束してあげてください。


    (翻訳&注釈:ベンゾジアゼピン情報センター 管理人


    著者:クリスティーハーフ医師 Christy Huff, MD, FACC
    クリスティーハーフ医師  Christy Huff, MD, FACC

    テキサス州フォートワース在住の認定心臓専門医。ダラスのテキサス大学サウスウェスタンメディカルスクール医学部で学び2001年にアルファ・オメガ・アルファ卒業。2004年セントルイスのワシントン大学で内科学修了。2008年テキサス大学サウスウェスタンメディカルスクール医学部で心臓病学を修了。2008年よりフォートワースで心臓専門医としてプライベートプラクティス(医師や弁護士などのフリーランサー)。2011年出産を機に退職し専業主婦。

    2015年健康を害し不眠対処としてザナックス(ソラナックス・アルプラゾラム)を処方され(訳注:不眠の原因はドライアイ症候群)2~3週間の連用で常用量離脱発生。ベンゾジアゼピン離脱症状について主治医および著名な神経科医からも回答を得られず、独自に調査し自分の症状がベンゾジアゼピン離脱症候群であることをつきとめる。
    地元の精神科医の助言のもと、ザナックスをバリウム(セルシン・ジアゼパム)に置換し、マイクロテーパリングでジアゼパムを漸減。自身の体験によりベンゾジアゼピン離脱症候群の厳しさとその危険性を認識することとなり、医大ではまったく教えられてこなかった事実に愕然とする。3年2か月のテーパリングをへてバリウムを断薬。断薬後1年経過した現在大きく回復。ベンゾジアゼピンの危険性と安全な減薬方法についての医師への教育、およびベンゾジアゾピン処方規制の必要性を啓蒙しつづけている。