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    どのようにしてベンゾがHPA AXIS障害を引き起こすか

    原文:HOW BENZOS CAUSE HPA AXIS DYSREGULATION

    著者:

    Perseverance

    投稿:December 20, 2011

    まず、視床下部 - 下垂体 - 副腎(HPA)軸がどのように機能するのかを見てみましょう。視床下部の傍室核(PVN, Paraventricular Nucleus)から始めます。PVNは、様々なストレス/または生理学的変化によって活性化されるニューロンの複数の亜集団を含みます。求心性入力として知られるこの情報は、脳の多くの領域からやってきます。PVNはこれらの求心性入力に応答してさまざまなペプチドを分泌します(10,11,13)。
    HPA軸を制御するために、PVN中のパルボ細胞性ニューロンは、抗利尿ホルモン(ADH)とも呼ばれるペプチドアルギニンバソプレシン(AVP)、およびコルチコトロピン放出因子(CRF)とも呼ばれるコルチコトロピン放出ホルモンを分泌します。(10)これらのペプチドは視床下部中央の隆起部でPVNから放出される(4,10)
    そこから視床下部を出て、下垂体門脈系と呼ばれる血管系を通って下垂体前葉に移動します。(1,2,3,9)CRHとAVPは相乗的に作用して副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を刺激し、それによってHPA系を活性化します。
    次に、ACTHは副腎からのコルチゾール、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、およびDHEAの合成と放出を刺激します。次の表に示すように、ホルモン生産の生化学的経路のDHE​​Aはさらに性ホルモンに生合成されます(5)。


    アンドロステンジオンは男性および女性の性ホルモンの共通の前駆物質です。それは2つの経路、HPA軸と視床下部 - 下垂体 - 性腺軸(HPG)を通して作り出されます。HPA経路では、アンドロステンジオンの産生はACTHによって支配されているが、HPGでは、アンドロステンジオンの産生は2つの性腺刺激ホルモン:卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)の制御下にあります。どちらもACTHのように下垂体の前葉によっても生成されます。生殖腺、精巣および卵巣は、FSHおよびLHの主な標的臓器です(6,8)。
    副腎からのアンドロステンジオンは末梢組織でテストステロンとエストロゲンに変換されます。副腎におけるDHEAからのアンドロステンジオンの産生は、閉経後の女性において特に重要である。なぜなら彼女らではすべてのエストロゲンおよびすべてのアンドロゲンが副腎DHEAからの末梢組織において作られるからである。閉経前の女性の生産は約50%です。 一方、男性では、40〜50%のアンドロゲンが副腎DHEA由来の末梢組織で作られているため、男性においても女性においても副腎DHEAから合成されたアンドロステンジオンの重要性を示しています。
    それでは、ベンゾはどのようにこれらに影響するのでしょうか? 最初から見ていきましょう。 まず、GABAがPVNに与える影響です。
    GABAとグルタミン酸は中枢神経系(CNS)の陰と陽のようなものです。 GABAは神経活動を減少させるが、グルタミン酸は反対の興奮作用を有する。 これがCNSの恒常性、つまり平衡状態を維持するわけです。
    GABA作動性およびグルタミン酸作動性回路は、HPA軸を制御するためにPVNニューロンと相互作用します。グルタメートは活性を刺激しますが、GABAニューロンはPVNの流出を抑制します(GABA neurons inhibit PVN outflow.)(12)。
    ベンゾはGABAの抑制効果を高めるので、このGABA-グルタミン酸バランスを崩します。ベンゾによってもたらされる過剰なGABA作動性抑制効果は、CRHおよびAVPのレベルの低下を引き起こし、それが次にACTH分泌を鈍くする。したがって、最終的にHPA軸が抑制されます(15,19,21)。
    この増強された抑制作用は海馬に分布しているGABA受容体にも影響を与えます。これは、HPA AXIS活性の調節にも関与するグルココルチコイドフィードバックの海馬媒介メカニズムを崩壊させます(14)。このフィードバックへの変更は、PVNにおけるCRFベースラインへ復帰の遅延につながるため、回復寿命の延長に寄与することになります( This may also contribute to the longevity of recovery, as alterations to this feedback plays a role in the delayed return to baseline of CRF in the PVN.)(22)。
    これらすべてがドミノ効果を持ち、コルチゾールとDHEAの副腎産生量を減らし(14,19)、それゆえテストステロンとエストロゲンのホルモン生合成を減らし、これらのレベルが低くなるわけです。
    ベンゾが中止されると、HPA AXISのリバウンドアクティベーションが発生します(21)また、ベンゾの投与間離脱により、抑制の繰り返しパターンが発生し、同じようにリバウンドが繰り返し発生する可能性があります(16,17)。
    ACTHおよびコルチゾール濃度は、ベンゾ中止後に劇的な増加を示すことが示されています(16,18,22)
    さらに、ACTHの作用に対する副腎の感受性は、ベンゾによって乱される可能性があります。ベンゾジアゼピンは副腎に特異的な受容体を持つこと、そしてベンゾジアゼピンはACTHに対する帯状帯の感受性を鈍くすることによって副腎にも作用することが示されています(20)。
    ベンゾに対する交差耐性であり、HPA軸に対して同様の効果を有するグルココルチコステロイド(GC)からの離脱に関する研究は、1)CRHニューロンはHPA軸が正常化する最後の部分であり、2)HPA軸およびPOMC−派生ペプチドの分泌(ex-CRH、AVP、ACTHなど)は長期間抑制されたままになる可能性があります。(23)実際には、GC治療中止後の完全HPA軸回復には1年以上かかることがある(24)。この期間は、ベンゾ離脱回復期間にそっくりであります。
    薬物が除去された後のHPA軸の脱抑制の程度が、離脱症状の重症度と直接相関しています。
    私たちの体がこれらすべての変化から回復するためにできることは何か?少ないがあるにはある。
     
    私たちの体の多くの機能は概日リズムに依存しているので、定期的な食事時間と目覚め/就寝時間を含む定期的なスケジュールを守ること。
    低血糖の食事療法に従うことは血糖値を一定の速度で保つのを助けます。血糖値は脳のストレスに関連する部分に影響を与えます。したがって、これを均等な値でキープすることは回復に役立ちます。
    回復中に、有酸素運動のような激しい運動を避けてください。運動は副腎を刺激して、カテコールアミン - ドーパミン、アドレナリン、およびノルエピネフリンを分泌させます。後者の2つは「戦闘または逃避」ホルモンです。これは、HPA軸を作動させるPVNのストレス反応を引き出します。ぜひ避けたいものです。ストレスレベルをできるだけ低く保ちたいのも同じ理由です…。 HPA Axisを研究するとき、研究者は実際に運動をさせてストレス反応を引き起こします。
    低ホルモンレベルのために、ホルモン補充療法は避けてください(ベンゾ離脱が原因の場合は別です)。ホルモンを加えることはあなたの体が元通りになるよう取り組んでいる時に自然な生産を妨げることになります。自然回復させるのが最善です。
    局所、経口、または静脈内ステロイドを避けてください。これにはヒドロコルチゾンクリームと軟膏、そして疼痛に対するステロイド注射が含まれます。経口DHEAサプリメントや処方プロゲステロンのような神経活性ステロイドもあります。
    これで終わりです。 HPA Axisが好転するまでには長い時間がかかりますが、やがて時間が経つにつれてすべてが元通りになるはずです。私たちは最善を尽くし、回復プロセスに忍耐強くいなければなりません。
     
    References
    1) http://en.wikipedia.org/wiki/Corticotropin-releasing_factor_family
    2) http://en.wikipedia.org/wiki/Corticotropin-releasing_hormone
    3) http://en.wikipedia.org/wiki/Hypothalamo-hypophyseal_portal_system
    4) http://en.wikipedia.org/wiki/Median_eminence
    5) http://www.urology-textbook.com/01/steroidbiosynthese.jpg
    6) http://en.wikipedia.org/wiki/Androstenedione
    7) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20478438
    8 ) http://en.wikipedia.org/wiki/Gonadotropin
    9) http://en.wikipedia.org/wiki/Vasopressin
    10) http://en.wikipedia.org/wiki/Paraventricular_nucleus_of_hypothalamus
    11) http://en.wikipedia.org/wiki/Hypothalamic%E2%80%93pituitary%E2%80%93adrenal_axis
    12) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15240350
    13) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11830180
    14) http://jcem.endojournals.org/content/87/10/4616.long
    15) http://jcem.endojournals.org/content/90/8/4777.long
    16) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15219633
    17) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8577815
    18) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19167197
    19) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8027217
    20) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12035937
    21) http://www.jneurosci.org/content/20/3/1240.long
    22) http://www.jneurosci.org/content/24/42/9303.long
    23) http://edrv.endojournals.org/content/24/4/523.full
    24) http://www.endotext.org/adrenal/adrenal14/adrenalframe14.htm
     

    (翻訳&注釈:ベンゾジアゼピン情報センター 管理人


    著者:Perseverance
    Perseverance

    ベンゾバディにおけるプロフィール:10年間ザナックス(アルプラゾラム・ソラナックス)服薬、その後6年間アチバン(ロラゼパム・ワイパックス)服薬。バリウム(ジアゼパム・セルシン)に置換後、依存専門病院でわずか3日間で減薬される。2011年1月21日ベンゾジアゼピン系薬を断薬。その後ニューロチン、オキシコドン、プロザックなどをテーパリング減薬。
    (訳注:ベンゾバディでPerseverance自身のバックグラウンドについての質問に本人が回答している。電気設計エンジニアであるとのこと。回答の一部を翻訳;「わたしは医療関係者ではありません。わたしのバックグラウンドは電気設計エンジニアです(笑)。しかしベンゾ離脱という厄災にあってやむなく勉強する羽目になって思うのは、人体と電子回路には非常に多くの共通点があるということでした。そのためさまざまな論文や医学文献を水を吸い込むように理解できたかもしれません。」)