Carbamazepine Treatment in Patients Discontinuing Long-term Benzodiazepine Therapy
Edward Schweizer, MD; Karl Rickels, MD; Warren G. Case, MD; David J. Greenblatt, MD
ベンゾジアゼピン長期服用者でその中止が困難であった40名の患者を、二重盲検下で、カルバマゼピン(200〜800 mg/日)投与群、およびプラセボ投与群に、無作為にグループ分けした。その後、両グループに対し、ベンゾジアゼピンの段階的な漸減(週ごとに25%づつ減量)を試みた。漸減終了後の5週間後、カルバマゼピン投与群では、プラセボ群に比べて有意に多くの患者がベンゾジアゼピン中止を維持できた。これは、離脱症状の重症度に統計学的に有意な差が認められなかったにもかかわらず、である。カルバマゼピンを投与された患者は、プラセボを投与された患者よりも離脱症状の重症度が大きく減少したと報告している。(統計学的な有意差はないものの)傾向としてそのようにレポートしており、毎日の患者評価による離脱症状チェックリストにおいてカルバマゼピン投与患者はそう評価している。ただし、12週間の追跡調査では、11名の患者(28%)がうつ病またはパニック症状に対処するために抗うつ薬を必要とした。このパイロット研究の結果は、カルバマゼピンがベンゾジアゼピン離脱症候群に対する補助薬物療法として有望である可能性を示しており、特にジアゼパム換算で20 mg以上/1日 のベンゾジアゼピンを服用している患者において有用と考えられる。
(Arch Gen Psychiatry. 1991;48:448-452)
※ 訳注: カルバマゼピン(先発品名:テグレトール)
ベンゾジアゼピンの中止を成功させることは、それが中用量または低用量であっても多くの患者にとって困難な場合がある。以前の研究1では、ジアゼパム40mg/日未満またはそれに相当する用量のベンゾジアゼピンを服用している患者の漸減失敗率は38%であった。世帯調査2によると、成人人口の約1.6%が同様に連日ベンゾジアゼピンを服用していることが分かっている。
ベンゾジアゼピン離脱症候群の管理は、現在のところ主に以下の通りである:(1) うつ病、不安、またはパニックに対する適切な治療、(2) 漸減スケジュールの活用、(3) 半減期の短いベンゾジアゼピンによる漸減療法が困難な場合、半減期の長いベンゾジアゼピンへの切り替え。
ベンゾジアゼピン離脱症候群の薬理学的管理に焦点を当てた研究はほとんどない。さらに、ベンゾジアゼピン投与を受けた動物実験を使っての、ベンゾジアゼピン離脱に対する薬理介入に関する前臨床研究(訳注:細胞や動物を使って行う段階の研究のこと。非臨床試験)すら、ほとんど発表されていない。
離脱症状の重症度を軽減し、ベンゾジアゼピン離脱を促進する上でいくつかの薬物介入の有用性を検討している対照試験が3つある。例えばTyrer3らは、塩酸プロプラノロールが漸減の結果に影響を及ぼさず、離脱症状の重症度を軽減する効果もわずかであったと報告している。LaderとOlajide、およびSchweizerとRickels5の両研究は、ベンゾジアゼピンをブスピロンにミリグラム対ミリグラムで置き換えてみたが、ブスピロンがベンゾジアゼピン離脱において無効であったと報告している(注意:どちらの研究もブスピロンの前治療期間は設けていなかった)。
対照試験を伴わない2件の症例報告では、α2アドレナリン作動薬である塩酸クロニジンがベンゾジアゼピン離脱症状の重症度を軽減することが示された6,7。しかしながら、引き続き慎重な二重盲検対照試験を行ったところ、クロニジンは離脱症状の重症度を軽減する効果が全くないことが示された8。
非対照症例報告9,10では、カルバマゼピンがベンゾジアゼピン離脱の薬物学的介入において効果がある可能性を示唆されている。両非盲検報告において、外来患者3名と入院患者9名がカルバマゼピンによる治療を受けた。ベンゾジアゼピンの使用期間は大きく異なり、5名の患者は6ヶ月以下の使用期間となっていた10。カルバマゼピンは、アルコール離脱症状の軽減にも効果があることが既に示されている11,12。これら初期の非対照症例報告が有望であったことから、ベンゾジアゼピン長期使用患者を対象に、ベンゾジアゼピン離脱におけるカルバマゼピンの二重盲検プラセボ対照試験を実施することとなった。
全患者は、フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学の精神薬理学研究ユニットにおいて治療および観察されることとなった。メディアでの告知、口コミ、および地域の医師への郵送により、被験者となる患者が募集された。研究で使う処方中止プロトコルはペンシルベニア大学の施設内審査委員会(IRB)により承認された。全患者から書面によるインフォームド・コンセントが得た。
本研究の中止試験に参加する条件として、患者は18歳以上であること、最低1年以上ベンゾジアゼピンを連日服用していることが決められた。ジアゼパム、アルプラゾラム、またはロラゼパムをジアゼパム換算で40 mg以下の用量(ジアゼパム5 mg=アルプラゾラム0.5 mg=ロラゼパム1.0 mg)で服用している患者はそのまま研究に参加した。異なるベンゾジアゼピンを服用していた6名の患者については、等価用量のジアゼパムに置換し、試験開始前に3週間の安定化期間を設けた。過去1年以内にアルコールまたは薬物の乱用もしくは薬物依存症の既往がある場合、不安定な医学的状態を有する場合、または適切な避妊を行っていない患者は研究から除外された。各患者の試験適格性を確認するため、スクリーニングとして病歴聴取、身体診察、全血球算定、血液生化学検査、尿検査、および尿中薬物スクリーニングが実施された。
まず患者は、通常の1日用量のベンゾジアゼピンを1〜2週間服用継続した。これに加えて、無作為化二重盲検法により、カルバマゼピン、あるいはプラセボのどちらかの投与が開始された。カルバマゼピンはプラセボと外観が同一のカプセルで提供され、1カプセルあたりカルバマゼピン200 mgを含有していたが、副作用により減らす必要な場合に備えて100 mgおよび50 mgのカプセルも用意された。治療は1日2回200 mg(カルバマゼピン400 mg/日)で開始され、その後1〜2週間かけて忍容性に応じて増量された。ベンゾジアゼピンの漸減中にも、その後の用量調整が許容された。先行研究13によると、カルバマゼピンの抗けいれん作用および抗侵害受容作用は速やかに発現する一方、抗躁作用および抗うつ作用は数日以内に発現するものの、最大効果に達するには2〜3週間を要するとのことである。したがって、1〜2週間の前治療期間が妥当と考えられた。
好中球減少症が発現しないことを確認するため、全血球算定が毎週実施された。治療の妥当性を監視するためカルバマゼピン血中濃度が定期的に測定された。測定には、感度1 µg/mL、同一検体に対する変動係数10%以下の酵素免疫測定法が用いられた。これらの検査結果は、患者の評価や治療に関与していない別の医師によってモニタリングされた。
ベンゾジアゼピン漸減が週25%の割合で開始され、4週間かけて完了した。漸減が終了し、患者がベンゾジアゼピン服用を中止した後も、カルバマゼピンまたはプラセボによる治療は2〜4週間継続された。
これは、先行研究1,14,15に基づき、この期間までに離脱症状の軽減が期待できるためである。この期間の終了時に、カルバマゼピンの投与は中止した。担当精神科医による励ましも効果なく、ベンゾジアゼピン漸減の継続が不可能であると患者が申告した場合、その患者は本研究脱落例とした。
患者は毎週診察を受けた。ベンゾジアゼピン非服用の状態は、血漿中ベンゾジアゼピン濃度測定により確認され、この測定は漸減期間中も毎週実施された。ジアゼパムおよびノルジアゼパム(デスメチルジアゼパム)の濃度は、電子捕獲検出器付きガスクロマトグラフィーにより定量された16。ロラゼパムまたはアルプラゾラムを服用していた患者については、同様の方法を用いてこれらの化合物の血漿中濃度が定量された17, 18。これらの測定法は、検出感度限界が1〜2 ng/mLであり、同一検体に対する変動係数は10%を超えないものであった。測定対象のベンゾジアゼピンにかかわらず、各血漿中濃度測定には、申告されていないベンゾジアゼピンの服用を検出するための包括的な血漿中ベンゾジアゼピンスクリーニングも含まれていた。患者は漸減終了後12週目に最終評価のために来院した。
ベンゾジアゼピン中止に伴う離脱症状へのカルバマゼピンの効果を評価するために、以下の臨床評価尺度が用いられた。(1)医師による離脱症状チェックリスト(38項目):ベンゾジアゼピンの中止に伴い頻繁に認められる症状として経験的に選定された各種症状の重症度を、0〜3点の尺度で評価するもの。(2)患者による自己評価尺度(27項目、毎日記入):医師が使う医師用離脱症状チェックリストと類似の項目を、患者が0〜4点の尺度で評価するもの14。患者評価チェックリストの平均合計点は、医師用離脱症状チェックリストの合計点と高い相関を示した(ピアソンの積率相関係数[r]:前治療期終了時 .83[N=39; P<.001]、ベンゾジアゼピン中止後1週目 .77[N=28; P<.001])。(3)ハミルトン不安評価尺度およびハミルトンうつ病評価尺度(いずれも毎週実施)。
すべての解析は、SAS統計ソフトウェアパッケージ19を用いて行われた。二値変数にはχ²検定またはFisherの正確検定が実施され、実測値および変化量に対しては分散分析が行われた。すべての結果は両側検定として保守的に解釈された。
55名の患者がカルバマゼピンまたはプラセボによる二重盲検治療に無作為に割りふられた。このうち15名が、ベンゾジアゼピン漸減開始前の前治療期間中に脱落した。早期脱落者のうち8名はカルバマゼピン群、7名はプラセボ群であった。脱落理由としては、9名が有害事象(カルバマゼピン群6名、プラセボ群3名)、6名が不特定の理由(大半は「プログラムの継続を断念」)であった(カルバマゼピン群2名、プラセボ群4名)。有害事象の報告により脱落したカルバマゼピン群の6名のうち、1名は300 mg/日を服用しており、残りの5名は150 mg/日以下を服用していた。カルバマゼピン群の脱落者から最も頻繁に報告された有害事象は、頭痛、悪心、およびめまいであった。
40名の患者が7〜14日間の漸減前期間を完了し、そのうち19名がカルバマゼピン群、21名がプラセボ群であった。これら40名の患者が週25%の割合でのベンゾジアゼピン漸減を開始し、本研究の対象となっている。
漸減前脱落者(早期脱落者)15名は、年齢、性別、就労状況、精神科診断、試験参加時のベンゾジアゼピン1日用量、およびベンゾジアゼピン治療期間において、漸減実施患者40名と大差なかった。しかし、ベースラインのハミルトン不安評価尺度得点(平均±SD:17.5±8.1 対 12.3±7.9; t=2.2; P<.05)およびハミルトンうつ病評価尺度得点(平均±SD:17.6±8.2 対 11.9±7.2; t=2.5; P<.05)が有意に高い点で、漸減実施患者40名とは異なっていた。
カルバマゼピン群(n=19)とプラセボ群(n=21)の間に、人口統計学的にも臨床的にも有意な差は認められなかった。両群合わせた平均年齢(±SD)は47±15歳であった。21名(52%)が女性であり、27名(68%)が就労していた。すべての患者群において、ベンゾジアゼピン漸減開始時の精神科診断は以下の通りであった。17名がパニック障害であり、そのうち1名は大うつ病、1名は双極性障害の合併症があった。12名が全般性不安障害、2名が特定不能の不安障害であり、そのうち1名は大うつ病、1名は社交恐怖の合併症があった。4名が大うつ病の診断であり、1名が双極性障害、1名が気分変調性障害、1名が適応障害、2名が慢性不眠症を合併していた。
研究参加時点で、29名の患者は初期診断に見られる程度の症状が認められ、6名は部分寛解または完全寛解の状態にあり、5名には臨床的に有意な変化が認められた。具体的には、ベンゾジアゼピン療法開始時に全般性不安障害と大うつ病の併存と診断されていた1名が全般性不安障害のみの診断となり、当初パニック障害と診断されていた1名がパニック障害と大うつ病の診断となり、当初適応障害と診断されていた1名は該当する症状がなくなり、当初全般性不安障害と診断されていた1名がパニック障害の診断となり、当初大うつ病と診断されていた1名が慢性気分変調症の診断となった。
本研究における対象患者のベンゾジアゼピン長期使用の平均継続期間は64か月(範囲:16か月〜18年)。5名を除くその他すべての患者が、ベンゾジアゼピンの中止を1回以上試みたものの失敗した、という経験を持っていた。
14名の患者がアルプラゾラムを服用しており(平均±SD:2.2±1.4 mg/日; 範囲:0.5〜5.5 mg/日)、17名がロラゼパムを服用しており(平均±SD:2.9±1.2 mg/日; 範囲:1.0〜5.0 mg/日)、9名がジアゼパムを服用していた(平均±SD:13.2±11.2 mg/日; 範囲:5.0〜30 mg/日)。
カルバマゼピン群の患者における、ベンゾジアゼピン漸減中のカルバマゼピン最大1日服用量の平均(±SD)は432±188 mgであり、範囲は200〜800 mgであった。ベースライン時のベンゾジアゼピン血漿中濃度はカルバマゼピン群とプラセボ群の間で差はなく、アルプラゾラムが31.2±27.2 ng/mL、ロラゼパムが25.3±12.9 ng/mL、ジアゼパムが704±584 ng/mL(ジアゼパムとノルダゼパムの濃度を合算)となっていた。
表1は、患者がベンゾジアゼピンなしで5週間過ごすことができたか、および12週間にわたりベンゾジアゼピン療法なしの状態を維持できたかという観点から、治験薬(カルバマゼピン)の治療成績をまとめたものである。

Fig1.—カルバマゼピンおよびプラセボ投与患者における、患者評価による離脱症状チェックリストスコアの変遷と週間平均ピーク値(上段)、および医師評価による離脱症状チェックリストスコアの変遷と週間平均値(下段)。
Fig2—ジアゼパム投与9例、ロラゼパム投与15例、およびアルプラゾラム投与14例の患者における血漿中濃度推移。
漸減後5週目の転帰はFisherの正確検定で、漸減後12週目の転帰はYatesの補正を伴うχ²検定で比較された。漸減後5週目の追跡時点において、カルバマゼピン群はプラセボ群と比較して、ベンゾジアゼピン療法なしで過ごすことができた患者が有意に多かった。この有意な転帰の差は、主としてジアゼパム換算で20 mg/日以上のベンゾジアゼピンを服用していたプラセボ群の結果に起因するものであった。8名中5名(63%)がベンゾジアゼピン療法なしの状態を継続することができなかった。これに対し、ジアゼパム換算で20 mg/日未満のベンゾジアゼピンを服用していたプラセボ群の患者では、13名中3名(23%)のみがベンゾジアゼピン療法なしの状態を維持できなかった(Fisherの正確検定、0.16)。
図1は、毎日記入させた患者用離脱症状チェックリストによる離脱重症度を評価したもの(上段パネル)、および毎週の医師用離脱症状チェックリストによる離脱重症度を同じく評価したもの(下段パネル)である。医師用離脱症状チェックリストの評価ではカルバマゼピン群とプラセボ群の間に差は認められなかったが、患者用離脱症状チェックリストでは、カルバマゼピンに有利ないくつかの傾向差(P<.10)が認められた。
5週目の転帰と同様に、ジアゼパム換算で20 mg/日以上および20 mg/日未満のベンゾジアゼピンを服用していた2つの患者群において、離脱重症度に対するカルバマゼピンとプラセボの効果を比較した。患者用離脱症状チェックリスト合計点で評価した離脱重症度は、カルバマゼピン群ではいずれの用量群でも同程度であった(ベースラインからピークまでの変化量の平均±SD:それぞれ10.0±4.9および10.5±3.6)。しかし、プラセボ群では差が認められ、1日のベンゾジアゼピン用量が高い患者は低い患者よりも重度の離脱症状を経験していた(平均±SD:それぞれ22.8±5.3および14.6±4.0; P<.20)。これら2つのサブグループの標本サイズが小さいことを考慮すると、この傾向は弱いものに留まるとしても、この知見は無視できない。患者用離脱症状チェックリストにおけるベースラインからピークまでの平均変化量については、脱落者と完了者の間に有意差は認められなかった(脱落者14.8±14.4 対 完了者20.3±14.3; t=1.02; 有意差なし)。
各ベンゾジアゼピンの血漿中濃度を調べたところ、短時間作用型ベンゾジアゼピンであるロラゼパムおよびアルプラゾラムでは最終投与から1週後に、長時間作用型ベンゾジアゼピンであるジアゼパムでは最終投与から3週後に、ベンゾジアゼピン血漿中濃度がゼロになることを確認した。各評価時点で全ベンゾジアゼピンを対象に実施した血漿スクリーニングでは、未申告のベンゾジアゼピン使用は検出されず、患者がプロトコルを完全に遵守していたことが確認された。漸減完了後ベンゾジアゼピンを再服薬した患者、すなわち漸減失敗例は、以降の解析から除外することとした。
カルバマゼピンの血中濃度は19例中12例で測定され、担当精神科医には結果を盲検化した。カルバマゼピン血中濃度は3.1〜10.0 µg/mLの範囲で、平均値(±SD)は6.1±2.6 µg/mLであり、抗けいれん作用に関して報告されている治療域(4.0〜12.0 µg/mL)をやや下回る程度である。本研究におけるカルバマゼピン用量は通常よりもやや低かったため9, 10、カルバマゼピン投与患者を1日600mg以上の群(n=6)と600mg未満の群(n=13)に二分した。そのようにすることで、高用量群と低用量群の間で、離脱症状の強度および漸減完了後5週時点でベンゾジアゼピンフリーのままであるかどうか、について比較したところ、両群のあいだに差異は認められなかった。
カルバマゼピンの副作用は患者の自己申告により収集した。カルバマゼピン投与患者において認められた中等度から重度の副作用は、鎮静(21%)、頭痛(21%)、悪心(11%)、精神機能障害(11%)などがあった。プラセボ投与患者において報告された副作用には、神経過敏(10%)と、悪心、不眠、便秘、口渇、発汗、筋けいれん、口の渇き、記憶障害、性欲低下がそれぞれにつき一人づつ確認された。カルバマゼピンの突然の中止後1週間において、不安または抑うつのリバウンド増加はなかった。むしろ、不安(ハミルトン不安評価尺度:12.4から10.5;t=1.7;P<.20)、抑うつ(ハミルトン抑うつ評価尺度:13.1から10.9;t=2.0;P<.05)がわずかに改善された。
カルバマゼピンによる肝ミクロゾーム酵素誘導により、高力価ベンゾジアゼピンであるクロナゼパム20およびアルプラゾラム21の血漿中濃度が有意に低下するという報告がある。そのため、ベンゾジアゼピン摂取量を一定に保ちながら、カルバマゼピン(400mg/日)(またはプラセボ)の前投薬を行った1〜2週間のテーパー前期間中に、ベンゾジアゼピン血漿中濃度の変化を調べた。
その結果、カルバマゼピン投与患者で12.7%の上昇、プラセボ投与患者で9.1%の上昇と、ベースラインから前投薬期間におけるベンゾジアゼピン血漿中濃度の変化率を比較した結果、カルバマゼピンがベンゾジアゼピン血漿中濃度に与えるという、有意な影響は認められなかった。なお、この結果は、パラメトリック検定(スチューデントのt検定)およびノンパラメトリック検定(ウィルコクソンの2標本検定およびフィッシャーの正確確率検定)の両方を用いて確認している。
漸減完了後12週時点で全40例(回答率100%)の追跡情報が得られた。漸減後5週時点で認められたカルバマゼピンに効果あり、とする統計学的な有意差は、カルバマゼピン投与患者(74%)がプラセボ投与患者(52%)よりも依然として多くがベンゾジアゼピンフリーであったが、この時点(12週時点)では有意差は消失していた。カルバマゼピン投与19例中6例(32%)およびプラセボ投与21例中5例(24%)が、漸減完了後5週時点の診察以降において抗うつ薬を処方され、12週追跡調査時にも引き続き抗うつ薬を投与されていた。医師の裁量により抗うつ薬を処方されていた患者の数は、12週追跡調査時にベンゾジアゼピンを服用している患者(27%)と服用していない患者(28%)の間でほぼ同数であった。これらの所見から考えられるのは、精神医学的精神病理の継続、再発、重症化または新規発症の可能性である。実際、抗うつ薬を処方されていた11例のうち、7例が大うつ病性障害、4例がパニック障害と診断されていた。
COMMENT
ベンゾジアゼピン中止においてカルバマゼピン投与の効果に関する、このプラセボ対照パイロット研究は、結果として、プラセボ投与患者と比べ、カルバマゼピン投与患者の方が離脱症状が統計学的にみてわずかに軽減したことが示された。この傾向は、患者が毎日記入する離脱症状チェックリストでのみ認められ、週1回医師が記入する離脱症状チェックリストでは認められなかった。患者評価は医師評価よりも離脱症状の重症度に対し、より敏感であった可能性が高い。医師評価は週1回のみ記入されたのに対し、患者評価は毎日だったこともあるかもしれない。
ベンゾジアゼピンの中止に耐えることができた患者において、カルバマゼピン投与はベンゾジアゼピン離脱の達成と維持に寄与するように思われる。カルバマゼピン投与患者の95%が漸減後5週目の時点でベンゾジアゼピンなしで維持していたのに対し、プラセボ投与患者では62%であった(P<.03)。しかしこの統計学的有意差は、12週目フォローアップ時には消失した(カルバマゼピン投与患者の74%対プラセボ投与患者の52%が依然としてベンゾジアゼピンフリー)。
これらの結果は、研究の特徴、特に研究対象群とそのベンゾジアゼピン身体依存の程度、および研究のテーマを強調することで、より良く理解できるかもしれない。例えば、第一にベンゾジアゼピン漸減開始前の高い脱落率に注目すべきである。なぜなら、これにより研究対象群が、より不安や抑うつの少ない群に偏ってしまったわけである。その結果、より症状の強い群においてベンゾジアゼピン漸減を促進する上でのカルバマゼピンの有効性は不確かなままである。
第二に、研究対象群はベンゾジアゼピンが高用量ではなかった。彼らは平均5年以上の連日ベンゾジアゼピン使用を報告し、また約90%が以前にベンゾジアゼピンを中止する試みに失敗していた。だが一方で、服用していたベンゾジアゼピンはジアゼパム換算で平均15〜25 mg/日程度という控えめな用量であった。我々が以前報告したように1,14、治療用量のベンゾジアゼピンから離脱するにあたって離脱症候が重度を超えることはまれである。今回のサンプルにおける医師による離脱症状チェックリストのピーク変化スコアはせいぜい約15であり、これは我々の以前の知見と一致している1。
我々は、カルバマゼピンの効果は、高用量のベンゾジアゼピンから漸減している患者においてより明確になると仮説を立てた。
研究対象群を高用量(ジアゼパム換算群で平均29 mg/日)と低用量(ジアゼパム換算群で平均10 mg/日)に分けたところ、カルバマゼピン投与患者とプラセボ患者の間で観察された離脱症状の重症度における傾向差は、ほとんどがより高用量(≥20 mg/日)のベンゾジアゼピンを服用していたプラセボ患者によるものであることがわかった。同様に、漸減後5週間の評価時点におけるカルバマゼピンの有益効果は、主として、より高用量のベンゾジアゼピンを毎日服用していたプラセボ投与患者の低い奏効率(63%)によるものであるとわかった。
この研究のもう一つの設計上の特徴は、投与されたカルバマゼピン治療の用量と期間である。患者は比較的低用量のカルバマゼピンで治療され、平均最大用量は432 mg/日、平均血漿中濃度は6.1 µg/mLであった。この血漿中濃度は、てんかん治療における治療域の下限であろう。そういうわけで、カルバマゼピン服用を嫌がる患者は結果的に低用量となった。しかしながら、ベンゾジアゼピン離脱という適応症において、(カルバマゼピン)治療的血漿中濃度が何をするのかは不明である。実際、双極性障害の治療において、カルバマゼピン血漿中濃度と治療反応の間に明確な相関はまだ確立されていない22。
患者をカルバマゼピンの1日服用量高群vs低群、およびカルバマゼピン血漿中濃度高群vs低群に二分したところ、効果に差は認められなかった。繰り返しになるが、服用量と血漿中濃度の範囲はあまり大きくなかった。
結果に影響を与えた可能性のあるもう一つの要因は、カルバマゼピン前治療の期間である。我々の研究では、患者はベンゾジアゼピン漸減開始前に1週間または2週間、前治療を受けた。そして数名の患者は漸減開始前にカルバマゼピンの最大用量に達していなかった。3週間のカルバマゼピン前治療が、薬物の抗離脱症状を増強した可能性がある。また、カルバマゼピン治療開始後あまりに早くベンゾジアゼピン漸減を開始したことが、離脱症状の重症度を悪化させた可能性がある。カルバマゼピンがベンゾジアゼピンの血漿中濃度を50%以上低下させるという報告もある20,21。
しかしながら、我々のサンプルでは、1〜2週間のカルバマゼピン前治療がベンゾジアゼピン血漿中濃度を低下させるという傾向は認められなかった。したがって、薬物相互作用による離脱症状の悪化はどうも考えられない。
漸減の結果に影響を与えた最後の2つの要因について言及しよう。第一に、多様な精神医学的診断を持つ患者を対象群に含めたことについてであるが、パニック障害のような単一の診断群に対する研究に限定することが理想的には違いないが、現実としては、ベンゾジアゼピン身体依存患者は、その疾病はそれぞれ異なる対象群であった。
我々は以前に、ベースラインで高い不安または抑うつ症状が、ベンゾジアゼピン離脱困難性と関連していることを報告した。しかし、特定の診断が離脱困難性に関わるかどうかについては、依然として未解決の研究課題である。我々の研究の小さなサンプルサイズとパイロット的性質により、このレベルにまで突っ込んだ詳細データを持っていない。
漸減の結果に影響を与える第二の要因は、ベンゾジアゼピンの半減期である。我々は以前に、漸減を用いることでベンゾジアゼピンの半減期が離脱症状を減弱させることを示したが、この要因は我々の研究においては臨床的関連性がほとんどなかったと考えられる。
カルバマゼピンの抗離脱作用のメカニズムは不明である。研究23によれば、カルバマゼピンはベンゾジアゼピン受容体に競合的に結合することが示されているが、いくつかの報告24-26では、塩化物イオンチャネルに連結した「中枢型受容体」よりも、カルシウムチャネルに連結したいわゆる末梢型受容体における結合の置換において、より強力であることが示唆されている。これらの知見の意義は不明である。なぜなら、臨床的に重要なベンゾジアゼピン効果は主に中枢型受容体を介して媒介されると考えられているからである。
前臨床研究27および臨床研究28は、カルバマゼピン治療が5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)神経伝達を増強することも示唆している。前臨床では、カルバマゼピンは電位依存性ナトリウムチャネル29の強力な阻害およびアデノシン受容体30の拮抗作用を示している。アデノシンはカテコールアミンおよび5-ヒドロキシトリプタミン機能の両方をシナプス前性に調節しているようである。ゆえに、カルバマゼピンはこれらの系統に間接的に影響を及ぼすと考えられる。さらに、カルバマゼピンはドパミン28,31を変化させる可能性があり、またγ-アミノ酪酸機能32,33(訳注:GABAのこと)も変化させる可能性があるが、後者は「末梢型」ベンゾジアゼピン受容体と関連している。これらの受容体メカニズムがどの程度カルバマゼピンの潜在的なベンゾジアゼピン離脱効果の基盤となっているかは不明。カルバマゼピンがベンゾジアゼピン離脱を促進する能力が、離脱症状の重症度に対するそのわずかな効果によるものかどうかも、また同様に不明である。もしかしたら部分的には元々の疾病・病理学的状態に対して直接的に効いているのかもしれない13。
これまで記録してきたように1,14、患者に併発している精神病理学的特徴は、ベンゾジアゼピン身体依存患者において様々である。12週間フォローアップ時点でベンゾジアゼピンを服用していなかった7名の患者(28%)と、ベンゾジアゼピンを服用していた4名の患者(27%)に抗うつ薬が処方されていた。抗うつ薬服用患者全員が、抗うつ薬使用の理由として、主にパニックまたはうつ病といった症状の再発を報告した。この不安とうつ病が混在する所見は、不安障害やうつ病性障害が長期間続きやすく、しかも同時に発症することが多いことをはっきりと示している34。これはまた、ベンゾジアゼピン長期使用を続けているかなりの患者が、単にベンゾジアゼピン身体依存であるというよりも、慢性的に発症している精神疾患に対する適切な維持療法を受けているから、ともいえる。
被験者群が少ない、という本研究の弱点を考慮してもなお、カルバマゼピンは、ジアゼパム換算で1日20 mg以上のベンゾジアゼピン服用患者におけるベンゾジアゼピン中止に寄与する有望な薬剤であると思われる。なぜなら、プラセボ患者での成功率がカルバマゼピン患者よりも低いという結果が認められたからである。カルバマゼピンは離脱症状の強度をより低くする可能性があり、ベンゾジアゼピン離脱の成功を促進する可能性がある。しかしながら、すべての患者がカルバマゼピンの副作用プロファイルに耐えられるわけではない。本研究はパイロット研究にすぎなかったため、カルバマゼピンの潜在的有効性を確認し、ベンゾジアゼピン身体依存患者に対する相対的な有害作用リスクも評価し、その臨床使用が適応となるにはより大規模な対照研究が必要である。
研究支援・協力
資金提供
ワシントンDC 公衆衛生局研究助成金 MH-08957
研究スタッフ
研究コーディネーター
Reita Fridman
プログラマー/アナリスト
Felipe Garcia-Espana, MA
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「クロナゼパムを減量しながらカルバマゼピンを服用」
Findingbttrfls「カルバマゼピンを服用しながら(ベンゾを)減薬している方はいらっしゃいますか?効果があるという話を聞いたことがあります。…略… 2か月前のことを思い出しました...カルバマゼピンを1.5週間試しましたが、その間クロナゼパムを一度も服用しなくとも何もありませんでした!カルバマゼピンのおかげで夜ぐっすり眠れたので、服用する必要がなかったんです。…略… 正直、カルバマゼピンをもう一度試してみようかと悩んでいます。服用をやめたのは、カルバマゼピンは体内の他剤の血中濃度に影響を与える可能性があり、血液検査などが必要になることを知ったからです。ガバペンチン(訳注:リリカのこと)の方が「安全」だと期待していましたが、精神的な副作用が出てしまいました。ネットで調べたところ、ベンゾジアゼピン離脱症状の緩和に役立つという情報はあります。しかし、服用開始後1~4週間は体内のクロナゼパムの血中濃度が低下してしまう可能性もあるようです。一方で、電位依存性ナトリウムチャネルを遮断し、神経過興奮性を抑制する作用もあるため、ベンゾジアゼピン離脱症状の緩和に役立つという情報もあります。…後略…」
※ 訳注:クロナゼパム=リボトリール、ランドセン
「助けてください」
BrainSpots「(クロナゼパム4mg、ザナックス15mg服用中)私はすでにカルバマゼピンを1日2回処方されています。抗てんかん薬なので、確かに落ち着く効果があります。...依存症専門施設に行くべきか?主治医には勧められています。悩んでいます。私は死ぬのでしょうか?」
Beendownthisroadbefore「まず、カルバマゼピンは服用しない方が良いでしょう。GABA受容体におけるベンゾジアゼピンと作用阻害効果があり、生き地獄な離脱症状を引き起こします。この薬はベンゾジアゼピンとの併用は禁忌です。」
※ 訳注:ザナックス=アルプラゾラム、ソラナックス
「カルバマゼピン」
Smiff「事態が悪化した場合に検討すべき選択肢 ー カルバマゼピン。その抗グルタミン酸作用により、抗けいれん薬および気分安定薬として作用し、アルコール離脱症状の治療にも用いられます。
参考:
ベンゾジアゼピン離脱症状に対するカルバマゼピン治療
長期ベンゾジアゼピン系薬剤の中止戦略
」
翻訳・注釈:ベンゾジアゼピン情報センター

現職(2026年時点)
学歴
過去の所属
専門分野 精神医学、ベンゾジアゼピン、不安障害、統合失調症、統合失調症治療薬ルラシドンなどを専門としている。
代表的な研究