書籍『ベンゾ系睡眠薬・抗不安薬の安全な離脱方法 改訂版』(A5版284ページ)販売中)

    ベンゾジアゼピンテーパリング戦略とソリューション【2017年版】

    原文:BENZODIAZEPINE TAPERING STRATEGIES AND SOLUTIONS

    著者:

    ベンゾジアゼピンインフォメーションコーリション メディカルアドバイザリーボード

    投稿:Oct 9, 2017

    ベンゾジアゼピンは「抗不安薬」として知られておりスケジュールIV薬剤として分類されています。2-4週間を超えて使用することは推奨されていないことから、ベンゾジアゼピンの処方では同時に退薬ストラテジーも患者に提供しなければなりません。どんな退薬方法をとるにせよ、幸運にも処方ベンゾジアゼピンから難なく退薬できてしまう患者がいますが、一方でどんなに退薬を望んでも精神的、肉体的離脱症状に衰弱しきってしまう患者もいます。その場合ベンゾジアゼピンはヘロインよりも離脱が難しいと言われています。いったいどの患者がほんの数週間でベンゾジアゼピンをやめることができるのか。それが不明である一方で明らかなことは、そう簡単にいかない患者は彼らの人生の数年をテーパリングに費やした結果、失敗してしまうこともあるということです。医師や患者がテーパリングの適切な方法について知っていることは不可欠です。ここで述べられている方法は、ドクターによる臨床経験とベンゾジアゼピンテーパリングを成功裡にやり遂げた何千人もの生存者によって開発されました。
     
    一般的な方法
    一般的な方法のひとつは、錠剤を1週間に1/4毎に切って減らしていくよう患者に指示することである。この方法だと、患者は約4週間でほぼ服用量は0に近くなる。つまり約4週間で退薬できるわけだ。これを漸減と見る者もいるが、多くの経験豊富な研究者、医師、患者は、4週間のテーパリングはあまりにも速いと考えている。研究により、身体依存における離脱症状はGABA受容体の変化が原因のひとつであることがわかっている。4週間はこれらの受容体(脳および身体の70%に存在する)が修復するのに十分な時間ではなく、患者にとっては耐えることができない症状を出現させる。事実、この約4週間で終わるような急速な漸減はベンゾジアゼピン長期服用者の少なくとも32〜42%に有効ではなく90%が禁断症状を経験した。遷延性離脱症候群を発症し、危険な発作すら発症する例が数多くある。

    ゆっくりと徐々に投与量を減らすことが、18-24ヶ月またはそれ以上の期間続く重度の遷延性離脱症候群またはPAWS(Post-AcuteWithdrawalSyndrome)のリスクを軽減することができる。依存している患者はベンゾジアゼピンに対しても非常に感作され、投与量のわずかな変動でさえひどい苦痛を引き起こすことがある。均等に4等分カットできるようにデザインされていない錠剤だと、その不均等がわずかな変動となって患者の症状を酷くしてしまう。
    もうひとつの一般的な方法は、1日あたり複数錠のうち1錠を数週間に渡って減らしていき、最終的にゼロにする方法である。この方法は1週間に1/4毎漸減と同じ問題を引き起こす。ベンゾジアゼピンインフォメーションコーリションは何年にも渡って、数千人もの患者からなるサポートグループ団体を観察してきた。その結果このアプローチでは数か月もしくは数年つづく遷延性離脱症状を“マシ”にする要因にはならなかった。さらに服用をスキップすること(訳注:隔日法)は、血中濃度レベルのゆっくりと安定した漸減につながらず、不安定でより大きい変動となり、しばしば不必要な苦痛と症状を患者にもたらしてしまう。
     
    アシュトン法と類似のガイドライン
    患者と医師の両方に利用可能な他の選択肢がある。先に述べたように、徐々に減薬するように設計されていない薬剤をテーパリングすることは困難である。アシュトン法では、バリウム(ジアゼパム)を使用することを推奨している。なぜなら、ジアゼパムは少ない用量の錠剤があり、短期作用型ベンゾジアゼピンよりも半減期が長いからである。例えば、クロノピン(クロナゼパム)は中程度の半減期だが入手可能な最小錠剤は0.125mgであり、ザナックス(アルプラゾラム)は半減期が短く最小錠剤は0.25mgである。これらは少用量のように見えるかもしれないが、ジアゼパム等価量で考えるとクロノピン0.125mgはジアゼパム2.5mgであり、ザナックス0.25mgはジアゼパム5mgである。アシュトンはまた、2〜4週間ごとに5-10%を超えてテーパリングすることを推奨していない。これは、患者の服用期間およびそれぞれの反応によるが、平均してテーパリングが少なくとも約10ヶ月以上かかることを意味する。推奨されるガイドラインと同様に重要なのは、患者が減薬にともなう自分の離脱症状の大きさに応じてテーパリングの減薬率やペースを自分で決めることが非常に大切だ。症状が重度、または寝たきり状態になっている場合は、アシュトンによると症状が治まるまで数週間減薬中断(ステイ)することもある。多くの場合これにより症状が治まり、患者はテーパリングを再開することができる。ベンゾジアゼピン減薬が個々の反応のために予想以上に長くかかることは珍しいことではない。アシュトンによると、ベンゾジアゼピンに長期的に身体依存している患者が、その退薬に6ヶ月かかったり18ヶ月(またはそれ以上)かかったり等々は問題ではないのである。アシュトンは長い半減期があるためジアゼパムを推奨している一方で、その他のガイドラインは離脱症状が認容可能であれば元々のベンゾジアゼピンのまま減薬することを推奨している。なぜなら他のあらゆる新規服薬の場合と同様、副作用のリスクがあるからだ。一部の患者はジアゼパムにうまく反応しなかったりする。長期作用型ベンゾジアゼピンに置換するのに何週間かかかりその分減薬を始めるのが遅れる。これは本人にとっては人生を変えるほどの長い搾費的プロジェクトにおいて、さらに時間を消費するものである。GABA-Aダウンレギュレーションはすでに多数の複雑な症状を引き起こしているため、置換後の薬の副作用なのか、それともただ単に離脱症状なのかを区別するのは困難であろう。考慮すべき別の問題は、離脱症状を緩和する作用機序薬が違う薬の使用である。たとえば抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬および抗精神病薬など。現在、離脱症状を緩和するためのFDA認可の薬物はない。何千人ものベンゾジアゼピン離脱者を見てきたベンゾジアゼピンインフォメーションコーリションの経験では、他剤の追加は離脱症状を悪化させるような複数の感受性を発達させることを発見した。十分にゆっくりとした患者主体での漸減ペースでなら、通常は追加の薬物療法は必要ではない。
     
    個々のニーズへの対応
    少用量錠がないアチバン、ザナックス、クロノピンなどの強力なベンゾジアゼピンから2〜4週間ごとに10%の減少を達成するにはどうすればよいか?
    一部の人にとっては元のベンゾジアゼピンをバリウム(ジアゼパム)に段階的に置き換え、アシュトン法のように少量ずつの減薬を行うことで退薬に成功している。より正確な減薬のためにジュエリスケール(秤)とカミソリブレードを使用する人もいる。しかしこれらの一見小さな切れ目といった誤差でさえ、特に発作障害を有する小児および成人にとって問題となり得る。バリウムはベンゾジアゼピンの半減期が最長であるが、最初の代謝物はほんの数時間後に分解することを覚えておく必要がある。敏感な患者はその投与量を均等に分割し1日に2〜3回服用すれば恩恵を受ける可能性がある。より短時間作用型のベンゾジアゼピンからテーパリングをする患者は、薬物の半減期に応じて1日に数回投与することが特に役立つことがある。例えば、クロノピンを服用している患者は1日3〜4回の投与が有効だが、アチバンを服用している患者は1日4〜5回投与する必要がある。ザナックスであれば血中濃度安定のために1日5〜6回の投与が必要な場合がある。定期的に投与する患者は1日中ベンゾジアゼピンの中断がないので、重度の「落ち込み(原文:drop)」を経験しないため、ベンゾジアゼピンテーパリングをうまく完了する可能性が高い。これらは一般に「インタードーズ」離脱(訳注:投与間離脱)と呼ばれる。
     
    テーパリングストリップ
    離脱分野の新進気鋭グルート医師によるテーパリングストリップ(TAPERING STRIP®)。これはオランダで注文することができる。これらのストリップはアシュトン博士の推奨よりも細かいテーパ率を持つことができる。このオプションを使用するなら、安定化ストリップを使用してテーパリングを月最大5-10%まで減速することを推奨する。
     
    マイクロテーパリング
    オンラインサポートコミュニティは、間欠的な離脱症状(訳注:投与間離脱症状)を避けるために、一日を通して薬物の血中濃度を均等にするのに役立つ「マイクロテーパリング」システムを開発した。マイクロテーパリングは毎日少しずつ少しずつ減薬し、トータルで毎月5〜10%の減薬とする方法である。毎日のマイクロ・リダクションは、毎週のより多い減薬が非常に負担な人々にとっては、身体的および精神的な混乱を回避してくれる。減薬をログ付けするのに、通常は日単位の記録が必要。またはスプレッドシートを使用すること(注:下図参照)。



    経口ジアゼパム溶液(Roxane Laboratories)はマイクロテーパリングにおいて貴重なツールであり5mg/5ml(1mg/ml)溶液として入手可能である。シリンジを使用して例えば毎日、または3日以上毎に総用量の0.1mg、といった少ない量を測定することができる。(もちろんどのくらい減少するかは、患者の個々の反応、減薬開始時点の服用量、および望ましい減少率による)。経口ジアゼパム溶液が合わない、またはジアゼパム自体が合わない人のために患者の服用するベンゾジアゼピンの液体化合物の処方箋を用いることができる。
     
    「OraPlus」またはアーモンド油ベースの化合物などの懸濁媒体は、粉砕された丸剤または大部分のベンゾジアゼピンの細粉とともに使用することができる。ほとんどの調合薬剤師はデータベースにアクセスして、特定のベンゾジアゼピンごとに適切な懸濁剤を選択することができる。液体化合物ならば患者がテーパリングペースをコントロールするのを容易にし、他の方法と比較してそういった微量づつの減薬に伴うめんどうな作業を減らしてくれる。ベンゾジアゼピンの懸濁液が決定された場合、国際的な薬剤師の協会(InternationalAcademyofCompoundingPharmacists)またはコンパウンディング・ファーマシューティカルズ・プロフェッショナル・アソシエーション
    (ProfessionalAssociationofCompoundingPharmacists)に登録された配合薬剤師が、彼らの知識とデータベースを使って適切で一貫した配合懸濁液を調製するだろう。
     
    最後に、オンラインサポートコミュニティで「水液体タイトレーション」と呼ばれる方法がある。一部の患者は、サスペンドビークル(溶媒)に対して忍容性がない、および/または配合懸濁液の調製における不一致のような複数の因子のために、液体混合が合わない場合がある。または現在服用ベンゾジアゼピンの離脱のために置換候補となるジアゼパムを処方してくれない、または粉末にするための処方箋を書いてくれる医者を見つけることが困難な場合がある。こういった苦境に遭った患者は、水や牛乳で自家製のサスペンションを作ることで、自分自身で首尾よく減薬している。錠剤は粉砕されるか、または例えば300mlの液体中でほろほろと崩壊する。1mlをこの液体から取り出して捨て、残りを摂取する。摂取溶液が日に日にどんどん少なくなり、いずれはゼロとなる。この方法は説明を聞くより実際にやってみるとはるかに簡単で、多くの患者がこのやり方で見事に退薬できている。

    ※ 管理人注釈:服用方法を変更する前にはかならず信頼でき知識のある薬剤師に相談してください。水溶液などの変更先服用方法が、変更前のように効かない場合があります。

    (翻訳&注釈:ベンゾジアゼピン情報センター 管理人


    著者:ベンゾジアゼピンインフォメーションコーリション メディカルアドバイザリーボード
    ベンゾジアゼピンインフォメーションコーリション メディカルアドバイザリーボード