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    線維筋痛症の痛み ― グルタミン酸およびヒスタミンとの関連性

    原文:Fibromyalgia Pain Linked with Glutamate and Histamine

    著者:

    リンダ・ドーベルステイン医師(Dr. Linda J. Dobberstein)

    投稿:16th Oct, 2017

    慢性的な痛み、慢性疲労症候群、そして線維筋痛症のそれぞれを線引きして区別するものはありません。これは先月、線維筋痛症で闘病中のレディガガのドキュメンタリー番組でも確認されています。彼女のようなエネルギッシュな女性が線維筋痛症で苦しんでるとはなかなか考えられないでしょう。しかし現実には何百万人もの人々が線維筋痛症もしくは他の神経性難病(慢性疲労症候群、ライム病、多発性硬化症、化学物質過敏症)で苦しんでいます。みんな外見ではわかりません。がたしかに苦しんでいます。毎日毎日苦痛と倦怠感に耐えながら病気と戦っています。いくつかの重要なキーをここで取り上げます。それを知ることで線維筋痛症の人々のQOLが改善できればと思います。線維筋痛症はしばしば急激なストレス、もしくは慢性化したストレス(身体的もしくは心理社会的)によって発症します。また環境および生物学的要因、遺伝的脆弱性もリスクとなります。それらに反応する形で慢性疼痛、慢性疲労、睡眠障害、認知障害につながります。男性よりも女性の方が発症率は高いです。神経性難病は、筋肉とその周辺組織の機能不全と考えられていました。しかしながら近年の研究によりこれは中枢神経系疾患ととらえらるようになりました。つまり脳内で痛みを感知するプロセスに障害があり、結果として“中作感作(central sensitization)”と呼ばれるものによって痛みが増幅されてしまうのです。また、他の神経学的変化、脳の異常、神経線維異常/末梢神経障害、神経化学変化もまたこの疾患に関連します。


    中作感作
    刺激に対して過剰反応することを中作感作といいます。通常であれば痛みとは感じない刺激(たとえばマッサージ、普通の接触、衣服のスレ)に対しても痛みとなって感じてしまいます。高ストレスが続くと自律神経系に影響を及ぼし結果、線維筋痛症になると考えられています。交感神経系(行動・戦闘)のアップレギュレーションと副交感神経系(休息・消化)のダウンレギュレーションが起きた、と考えられるこの神経学的機能不全は、酸化と炎症促進物質の増加によって最終的には固定化された痛みになってしまうのです。そのような状態が続くと、痛みの処理、ストレス耐性、睡眠、およびエネルギー産生に悪影響となる脳内変化が起きます。
     
    脳疲労
    脳疲労、ブレインフォグ、認知機能障害といった線維筋痛症にみられる症状は困難な問題です。現代の医療技術で脳内変化をとらえることで、なぜこういった症状が起きるか検証できます。最近ですと2017年7月に発表された研究ではEEG(electroencephalograph activity)によって脳波と神経活動の変化を検証できたとしています。
    研究者は、線維筋痛症患者において通常よりも大きな“神経ノイズ”が生じていることをつきとめました。神経ノイズが高い患者は認知機能に大きな問題がありました。神経ノイズはニューロンの伝達エネルギーが弱まり神経細胞間で同期がうまくいってないとも考えられています。つまり、たとえばラジオを聴こうとしてもラジオ信号が弱く音品質が良くないために音がザーザーといってうまく聞けない状態に似ています。別のEEGによる研究では、脳内の痛みを管理する分野が良くない状態、まるで道路にかけられた橋が壊れている状態、だとしています。これは痛みを抑制する能力を低下させます。その他の研究では灰白質の喪失、脳の収縮などが示されています。これによって脳内化学変化が起き、酸化ストレスや組織機能不全が起こりえます。
     
    グルタミン酸レベルの上昇
    線維筋痛症において変化する神経化学物質に2つの興奮性神経化学物質があります。ひとつはグルタミン酸。もうひとつはヒスタミン。線維筋痛症とグルタミン酸の関連性に関する重要な研究が2017年10月のClinical Journal of Painで発表されました。この体系的なレビューの中で、脳内の分野のいくつか(後部帯状回、内膜、腹側前頭前野、扁桃体)のグルタミン酸レベルが高いことを示していました。また、高レベルのグルタミン酸レベルは線維筋痛症と関連することもわかりました。線維筋痛症の研究に長く携わってきた研究者にとって、これはとくに新しい発見ではないものの、この研究結果があらためて線維筋痛症とグルタミン酸の関連性の重要性をいままで以上に再確認するものでした。グルタミン酸は神経細胞によって脳内に放出される興奮性神経化学物質で、学習と記憶機能に不可欠であるものの少量で十分な非常に強力なものです。したがって多すぎるグルタミン酸は神経細胞にダメージを与えます。グルタミン酸が高レベルになるのはそれが過剰に放出されたか、もしくは“正常量”であっても神経細胞が過剰に反応してしまうかです。高レベルグルタミン酸は高レベルのROS(reactive oxygen species)につながり、脳に酸化、炎症ストレスを与えます。グルタミン酸過剰による症状として、痛み、不安、睡眠障害、うつ病、ムズムズ足症候群、かゆみ、集中力の低下、および認知能力の低下、などが挙げられます(管理人注:ベンゾ離脱症状とほぼ似たような症状)。
    脳内でグルタミン酸飽和になる理由はいくつか考えられます。たとえば、神経変性疾患、脳震盪/外傷性脳損傷、脳卒中、低血糖症、および騒音ストレスなど。慢性的かつ持続的なストレスもまた同様です。ストレスホルモンであるコルチゾールは脳内のグルタミン酸を放出させるのです。ストレスとは身体の恒常性を崩すものすべてです。(身体的ストレス、精神的ストレス、感情的ストレス(管理人注:そして薬剤性ストレス。たとえばアルプラゾラムCBI(Alprazolam CBI)や抗精神病薬CBI(Antipsychotic Drug CBI)など。ベンゾ誘発有機性脳症候群を参照ください)。 慢性的なストレスホルモン、コルチゾールによってグルタミン酸の血中濃度が高いままになると、もし血液脳関門が機能低下していた場合脳にとっては大きな問題となるでしょう。
     
    ヒスタミンレベルの上昇
    ヒスタミンもまた、グルタミン酸と同じようにストレスによって放出され、線維筋痛症および慢性疲労症候群/筋萎縮性脳脊髄炎患者において上昇が見られる興奮性神経伝達物質です。ヒスタミンは免疫系、皮膚、消化管に関与していて、覚醒、血圧、満腹感などの脳機能に大きな役割を果たします。ヒスタミンはマスト細胞と呼ばれる免疫細胞に含まれています。マスト細胞は、アレルゲンまたは免疫系ストレッサーのような様々なシグナルに応答してヒスタミンを放出します。マスト細胞は主に視床下部(hypothalamus)のとなり視床(thalamus)に多く存在し、この領域は睡眠 - 覚醒の中枢センターです。マスト細胞が脳内で高レベルのヒスタミンを放出すると、そのシグナルを視床下部が受け取り睡眠障害を引き起こします。視床/視床下部内のヒスタミンの過剰な放出が、線維筋痛症および慢性疲労症候群に見られる睡眠障害につながると考えられています。ヒスタミンはまた中作感作に作用し、慢性的な広範囲の疼痛を引き起こします。というのも、ヒスタミンは酸化ストレス、慢性炎症ストレスの原因となる物質Pおよびグルタミン酸を放出させるからです。ある人はDAO遺伝子変異のためにヒスタミンをうまく処理できていないのかもしれません。またある人は食事のヒスタミン量が多すぎるのかもしれません。ヒスタミンの原料となるものには、たとえばワイン、シャンパン、ビール、酢、ヨーグルトなど発酵飲食品が含まれます。マスト細胞は皮膚にも多く存在します。したがって、痒み症状は皮膚にあるマスト細胞からのヒスタミン放出によるものです。線維筋痛患者は、通常より皮膚に5〜14倍多くのヒスタミンを有することが判明しています。皮膚のマスト細胞は、本来ならば外部の病原体から体を守る免疫防御システムです。

    (管理人注釈:現在は削除されていますが、ドーベルステイン医師のこの記事は最初、グルタミン酸レベルを抑える栄養素としてマグネシウムを挙げていました。それだけでどうにかなるものではないと思いますが「パーカーの勧めるサプリメント」をご参考になさってください。そして必ず医師と相談を。)

    (翻訳&注釈:ベンゾジアゼピン情報センター 管理人


    著者:リンダ・ドーベルステイン医師(Dr. Linda J. Dobberstein, DC, Board Certified in Clinical Nutrition)
    リンダ・ドーベルステイン医師(Dr. Linda J. Dobberstein, DC, Board Certified in Clinical Nutrition)

    米国栄養委員会のボードメンバー。ミネソタ州のノースウェスタンヘルスサイエンス大学を卒業後、1990年にウェルネスリソースで働き始めバイロンJ.リチャーズの指導を受ける。甲状腺、副腎、脳、レプチン機能、線維筋痛症、ミトコンドリア、エプスタインバー、SIBO、および慢性疲労症候群を専門とし25年以上の経験の中で多くのピアレビューされた文献を発表している。